『平成28年版高齢社会白書』(内閣府)によると、高齢者が要介護となる原因の1位が「脳血管疾患」、2位が「認知症」、3位が「高齢による衰弱」で、その次が「骨折・転倒」とあります。「骨折・転倒」は全体の約12%を占めます。
転倒を防ぐには、運動や体操などでバランス能力や歩行能力の改善を図ることも必要ですが、生活環境を整えることで転倒のリスクを軽減することもできます。
高齢者の転倒を防ぐための生活の工夫について、考えてみましょう。
動線に障害物を置かない
ベッドからトイレ、リビング、風呂場、洗面所、玄関など、普段、家の中で移動する動線上に障害物はないでしょうか?
高齢者の場合、足元に置いてあったものにつまずく、踏んづけて滑る、よけようとしてバランスを崩すなどして転倒するケースがよくあります。
意外と多いのが、ラグやカーペットなどの敷き物の端が浮き上がっていて、つま先をひっかけて転倒するケースや、マットに足を滑らせて転倒するケースです。
また、洗面所や風呂場など、床が水でぬれやすいところは滑りやすくなるのでさらに注意が必要です。
新聞や本、脱いだ洋服、電源コードなども置き場所を決め、動線上に物は置かないようにしましょう。
物があちこちに散らばっていると、注意がさまざな場所に向けられ、注意がそれてしまい、その結果、転倒につながることもあります。
高齢者が頻繁に行き来する動線は整理整頓を行い、視野をすっきりさせておくことも大切です。
手すりの設置は適切な場所へ
手すりは、段差のある場所や階段、トイレや浴室、玄関などに設置します。
上りにくい場所、立ち上がりにくい場所、ふらつきやすい場所に、手すりの設置を検討すると思いますが、体の重心を支えるポイントに適切に設置しなければ、効果がありません。
手すりの高さや向き、種類などは、個人の筋力やバランス能力などによって異なります。
手すりを設置する際、「どこに設置すれば良いか?」「どのタイプの手すりを選べば良いか?」など、適切な判断ができない場合には、自治体の地域包括支援センターや担当のケアマネジャーに相談しましょう。
タオル掛けやドアノブ、タンスの引き出し、椅子などを手すり代わりに使用している方がいますが、これらは強度が不足していたり、不安定だったりするので、体重をしっかり受け止めることができず、転倒する場合もあります。必ず適切な手すりを設置するようにしてください。
段差は照明やテープで見えやすく
高齢者は視力が著しく低下したり、色彩感覚が鈍くなったりする傾向があります。
夜間にトイレに起きた時など、室内が暗くて、段差や障害物に気づかず転倒することもあります。
夜間は、足元を照らすフットライトや、ぼんやり明るい間接照明などを利用して、睡眠を妨げない程度に室内を明るくする工夫をしましょう。
昼間の明るい時間帯でも、光の反射の影響で、床の段差がわかりにくくなることがあります。段差や階段の縁にテープなどを貼って、視覚的に気づきやすい環境をつくりましょう。
スリッパはつまずきやすい
室内でスリッパをはいている方も多いですが、つま先が上がりにくいため、つまずきやすくなります。
また、段差などで脱げてしまうこともあり、転倒する恐れがあります。
滑りにくいルームソックスや、踵まで覆われたルームシューズを選んで、スリッパよる転倒を防ぎましょう。