口から取り込まれた食べ物はどうなるのか?
まず、口の中で噛み砕かれた食べ物は、胃や十二指腸で消化(分解)されます。
そして、エネルギー源となるブドウ糖や脂肪酸、体をつくり、維持するために必要なアミノ酸などが小腸(大腸)で吸収されて、体内で利用されます。
消化に必要な消化液(唾液、胃液、膵液、腸液)には、三大栄養素である炭水化物、タンパク質、脂肪を分解する各種の酵素が含まれています。
炭水化物はブドウ糖に、タンパク質はアミノ酸に、脂肪は脂肪酸に、というように体内に吸収される最小単位の小さな分子まで分解されます。
ちなみに胃では、pHが1~2という非常に強い酸性の胃酸によってタンパク質が分解されます。
逆の見方をすると、最小単位の小さな分子まで分解されていないタンパク質やデンプン、脂肪などの大きな分子は小腸では吸収できないので、栄養素が小腸に達するまでに小さな分子に分解される必要があります。
小腸で吸収されなかった食物の残りは大腸で腸内細菌によって分解・利用されて、最終的には便として排泄されます。
多くの薬、毒物、化学物質やアルコールなどは分子が小さいので、消化の必要がないままに小腸から吸収されます。
分解と再利用
生命の営みとは、動植物などの食材を体内に取り込み、それが栄養素として吸収される最小単位の分子まで分解(消化)され、それを吸収し、さらに原料にして自分が必要としている物質を体内で再合成するということです。
したがって、再合成された物質は、食事として摂ったものとは全く違う物質に変換されてしまいます。
たとえるなら、古い自動車を解体して、そこから鉄、アルミ、銅、プラスチックなどを取り出して、それらを原料に鉄骨やアルミ缶、電線、ペットボトルなどを作るようなイメージでしょうか。
原料まで分解されたものは、他の製品を作るために再利用されるのです。
消化・吸収のポイントは次の2点です。
- 分子サイズの大きいものは吸収されない。
- 消化・吸収されたものは体内で違う物質を作る原料となる。
この2点は消化・吸収の大事なポイントなので、押さえておいてください。
サプリメントも分解される
サプリメントは本来、ビタミン、アミノ酸、ミネラルなどの分子量の小さい栄養成分を補給するための栄養補助食品でした。
これらの成分は小さな分子なので分解されずに、腸から吸収されて不足しがちな栄養素の補給として働いていました。
しかし、最近はサプリメントの範囲が拡大され、多種多様なサプリメントが販売されています。今や、一大ビジネスになっていることはご存じのとおりです。
たとえば、膝関節の動きを良くしたり、美肌効果があるといわれるヒアルロン酸、グルコサミン、コンドロイチン、コラーゲンなどは、非常に大きな分子(分子量が100万以上)の多糖類やタンパク質なので、胃でアミノ酸や糖に分解されてしまいます。
たとえ、そのままの形で腸まで到達したとしても、非常に大きな分子なので腸で吸収されることはありません。ましてや関節や皮膚まで運ばれることもありません。
また、近頃話題の「酵素ドリンク」ですが、ほとんどの酵素はタンパク質なので、これも胃で分解されてアミノ酸になってしまいます。
このように、口から取り込まれたものが最小単位の小さな分子にまで分解されてしまえば、口から取り込まれたものがサプリメントであろうが、普通の食事であろうが、違いはないのです。
ほとんどの必須アミノ酸、ミネラル、ビタミンは、普通の食事をしていれば、必要な量を摂取できるので、これらの欠乏症にでもならないかぎり、実質的にはサプリメントによる栄養補給は必要がないと考えていいでしょう。
もし、サプリメントを買うのであれば、その成分が体内で消化されず、その成分のまま吸収されて、本当に広告宣伝の言葉どおりの効果を示すものか、よく考えてみましょう。
【参考】