「筋肉を増やすと、基礎代謝が上がってやせる」というのは本当なのでしょうか?
筋肉は安静時でもエネルギーを消費するので、筋肉の量が多ければ基礎代謝量も上がるというのは事実です。
しかし、ここで考えなければいけないのは、基礎代謝量のうち、筋肉の代謝がどれほどの割合を占めているかということです。
基礎代謝量に占める身体の各器官の割合は、大人の場合、肝臓が27%、脳が19%、筋肉(骨格筋)が18%と言われています。
仮に筋肉の量が1.5倍になったとしましょう。
単純計算ですが、筋肉の量が1.5倍になっても、基礎代謝量は9%しか増えません。
基礎代謝量の9%というのは、中年男性(基礎代謝量約1500キロカロリー)であれば、約130キロカロリーです。
食品に置き換えると牛乳1パック分のカロリーにしかなりません。
そもそも、筋肉の量を1.5倍に増やすには、かなりハードな筋トレをしなくてはいけません。
そう考えると「筋肉が増えた→基礎代謝量が上がった→やせた」という考え方にはやや疑問がわきます。
むしろ、筋肉の量を増やすために運動をしたことで、活動代謝量が増加して、やせたと考えるのが自然だと思われます。
運動か食事制限か?
厚生労働省は「健康づくりのための運動指針2006~生活習慣病予防のために~」の中で、1エクササイズという単位を用いて各運動による消費カロリー量を提示しています(週に23エクササイズ推奨)。
消費カロリー量は体重、性別などで異なりますが、おおよその目安は次の通りです。
1エクササイズの身体活動量に相当する体重別エネルギー消費量 | ||||||
体重 | 40kg | 50kg | 60kg | 70kg | 80kg | 90kg |
エネルギー消費量 | 42kcal | 53kcal | 63kcal | 74kcal | 84kcal | 95kcal |
1エクササイズに相当する運動は、次のようになっています。
1エクササイズに相当する活発な身体活動 | |||
生活活動 | 運動 | ||
歩行 | 20分 | 軽い筋トレ | 20分 |
自転車 | 15分 | バレーボール | 20分 |
子どもと遊ぶ | 15分 | ゴルフ | 15分 |
階段昇降 | 10分 | 速歩 | 15分 |
重い荷物を運ぶ | 7~8分 | 軽いジョギング | 10分 |
エアロビクス | 10分 | ||
ランニング | 7~8分 | ||
水泳 | 7~8分 |
先ほど、筋肉の量を1.5倍に増やしても、基礎代謝量は約130キロカロリー程度しか増えないといいました。
約130キロカロリーを消費するのに、体重60kgの人であれば、水泳なら約15分、軽いジョギングなら約20分が必要です。
やせるためには、筋肉の量を増やして基礎代謝量を上げるよりは、毎日適度な運動をすることのほうが現実的です。
前述したように、水泳15分に相当する130キロカロリーは、牛乳1パック分にしか過ません。
そうすると、体重を減らすには食事制限が最も効果的ということになります。
ちなみに主な食品のカロリーは次のようになっています。
主な食品カロリー | |||
ご飯お茶碗1杯150g | 252kcal | バナナ1本120g | 103kcal |
食パン6枚切り1枚60g | 156kcal | 和牛もも脂身つき100g | 259kcal |
ロールパン1個30g | 95kcal | 和牛もも赤肉100g | 193kcal |
クロワッサン1個40g | 179kcal | 豚もも脂身つき100g | 183kcal |
茹でうどん1玉250g | 263kcal | 豚もも赤肉100g | 128kcal |
茹で中華めん1玉170g | 253kcal | 鶏もも皮つき100g | 253kcal |
そうめん・冷麦(乾)100g | 356kcal | 鶏もも皮なし100g | 138kcal |
マカロニ・スパゲティ(乾)100g | 379kcal | 鶏卵1個60g | 91kcal |
木綿豆腐1丁300g | 216kcal | ベーコン1枚20g | 81kcal |
絹ごし豆腐1丁300g | 168kcal | ウインナー・ソーセージ1本20g | 64kcal |
油揚げ1枚20g | 82kcal | 普通牛乳1パック200g | 134kcal |
納豆1パック40g | 80kcal | 低脂肪乳1パック200g | 92kcal |
(参考)グリコ「栄養成分ナビゲーター」 |
ご飯お茶碗1杯で250キロカロリー、クロワッサン1個で225カロリーということを考えると、25分の水泳や、40分のジョギング(体重60キロの場合)よりも、ご飯1杯、クロワッサン1個を我慢したほうが、ダイエットには効果的のようです。
もちろん適度な運動を習慣化することは、体重の減少以外にも血行の促進や心肺機能の維持・向上など、健康状態を向上させる効果があります。
健康的にダイエットをするためには、食事制限を行いながら、適度な運動を心がけることが一番の近道といえるでしょう。
【参考】