「トウガラシの脂肪燃焼効果でダイエット!」といわれますね。
食べたらもちろん、匂いを嗅いだだけでも汗がにじんでくるトウガラシは、
いかにもダイエット効果がありそうです。
しかし、残念なことにトウガラシを食べるだけで脂肪が分解されて燃焼したり、
体重が減るという効果は立証されていません。
トウガラシの辛味成分はカプサイシンという物質です。
カプサイシンは痛覚を刺激して熱感や痛みを感じさせますが、実際の温度は上昇しません。
体内に吸収されたカプサイシンは、脳の内臓感覚神経に働いて、
副腎(髄質)からのアドレナリンの分泌を活発にし、発汗及び強心作用を促します。
その結果として体温も上昇するので、このような作用がいかにも脂肪の燃焼効果や
ダイエット効果があるように思われているのでしょう。
そもそも「食べるだけで体脂肪が分解・燃焼する」、そのような食品はあるのでしょうか?
脂肪ってなに?
脂肪はエネルギーの貯蔵庫です。
人間のエネルギー源はブドウ糖です。
これは炭水化物や糖質を体内で分解することで得られます。
体内のブドウ糖は燃焼(酸化)によって体温の維持や、別のエネルギー物質に
変換されて体の機能維持に使われます。
自動車がガソリンを酸素で燃焼させて走るように、
人間は食事を消化・吸収すること得られるブドウ糖を、
呼吸によって得られる酸素を使って燃焼(酸化)することで生命活動を維持しているのです。
人間が活動を続けるには、自動車にガソリンタンクがあるように、
人間にもブドウ糖の貯蔵庫が必要です。
人間のエネルギー源の貯蔵庫には2種類あって、すぐに使わないブドウ糖は
グリコーゲンと脂肪の二つの形で貯蔵されます。
グリコーゲンは複数のブドウ糖がくっついたもので肝臓に貯蔵されていて、
すぐに活動に使うことができます。
しかし、脂肪は糖質とタンパク質が結合したものでエネルギーとして活用するには
再分解しなければならないため時間がかかります。
お店で言えば、グリコーゲンが“店舗在庫”、脂肪が“倉庫在庫”のようなものですね。
実際に人間が飢餓状態になると、まずグリコーゲンが消費され、
それでも飢餓が続くと脂肪が分解されます。
人間は全く食事をしなくても2~3ヵ月は生存可能なだけの脂肪を蓄えているので
(当然、太っている人のほうが長く生きられます)、
食事内容で「脂肪を燃焼させる」ことは不可能と思うのが妥当でしょう。
食事で体重を減らすには、1日の摂取カロリー量を必要カロリー量以下にするしかありません。
そもそも、人間は本来、毎日、野山を駆けて狩猟や採取をして生活していました。
次の獲物にありつくまでは空腹のままで活動を続けなければならないので、
このようなエネルギー貯蔵のシステムが発達したわけです。
現代では太りやすい体質は好ましくないと思われていますが、
本来はエネルギーの貯蔵に優れた、生存に適した体質なのです。
つまり、「脂肪を燃焼する食物」は人間にとっては利益の無いものなので、
伝統的な食べ物で脂肪を燃焼するという発想自体が矛盾していると思われます。