同じ精神科でも立地や規模で雰囲気は異なる
一概に精神科といっても、精神科病院なのか、総合病院の精神科なのか、メンタルクリニックなのか、はたまた、立地が都市部なのか、郊外なのか、病院の種類や規模、立地条件などで病院の雰囲気は変わってきます。
精神科の受診を躊躇している人は、昔の精神科病棟のイメージが強いのかもしれません。
都市部から少し離れたところにある古くからの精神科病院では、待合室はまばらで、慢性期の患者さんがほとんどかもしれません。
精神科の入院病棟がある場合、落ち着かずに大声を出したり、ぶつぶつ独り言を言ったりしている患者さんがいることもあり、少し違和感を覚えるかもしれません。
他方、都市部にある総合病院の精神科では、待合室にサラリーマン、主婦、学生、お年寄りとさまざまな患者さんがいて、待合室も比較的混んでいます。
街中のメンタルクリニックでは初診も再診も予約制のところが多いので、待合室に人はほとんどいないでしょう。
もし、精神科への受診をためらっている人は、まずは気軽にこういうメンタルクリニックを受診してみてはどうでしょうか。
心身の異常に気づいたら早く受診すること
一般的には精神科病院、総合病院(大学病院)の精神科、(街中の)メンタルクリニックの順番で、受診の敷居は下がるようで、敷居が下がれば下がるほど、「眠れない」「微熱が続く」「のどが詰まる感じがする」といった比較的症状の軽い人が受診します。
特に身体に異常を感じている人の場合には、先に内科や整形外科などで「異常なし」と診断されてから、精神科を受診されることが多いです。
そもそも他の診療科の医師には、患者さんの訴える症状が精神疾患によるものかどうかの判断がつかないことも少なくないのです。
ただし今後、精神科での研修を積んだ医師が増えてくれば、こうした問題は減ると思われます。
その一方で、うつ病で入院した患者さんが入院後しばらくして、微熱と発疹が見られたので、内科で診てもらったところ、じつはリウマチ性筋痛症だったとか、最悪のケースだと、腹痛の原因を調べたら末期の大腸がんだったということもあります。
精神科の治療も大切ですが、必要に応じて身体面の受診や検査を行うことも大切です。
昔に比べて精神科の敷居が低くなったとはいえ、依然として多いのが、精神科への受診をためらい、半年や一年もの間(ひょっとしたら数年間も)病気を我慢したうえで、どうにも手に負えなくなって家族と一緒に病院にやってくる人です。
まともに食事ができなくなって体重が数十キロも落ちた、家でおかしな言動が目立つようになった、といった状態になってしまっては外来だけでは対処できない可能性が高くなります。
心身の異常に気づいたらなるべく早く受診することを勧めます。
(備考)
この記事は『こころの病気を治すために「本当」に大切なこと : 意外と知らない精神科入院の正しい知識と治療共同体という試み 』(青木崇・著)の内容を一部抜粋・改編したものです。
青木 崇(精神科医)
1970年川崎生まれ。1996年京都大学医学部医学科卒。
京都第一赤十字病院研修医、富田病院(函館)常勤医師を経て、2005年国立清華大学人類学研究所(台湾・新竹)卒(人類学修士)。帰国後、のぞえ総合心療病院(久留米)、江田記念病院(横浜)で勤務。2018年からは外務省在外公館で医務官として勤務している。精神科医、精神保健指定医、日本精神神経学会精神科専門医・指導医。『こころの病気を治すために「本当」に大切なこと : 意外と知らない精神科入院の正しい知識と治療共同体という試み 』
著者・青木崇(精神科医)