介護施設などで転倒者を発見した時には、まず誰かを呼んで複数人で対応しましょう。その際、施設長や看護師に報告・相談をしてください。
その時に、どのようなことに気をつけて報告・相談をするのか、具体的に勉強していきましょう。
(1)意識の確認
まずは声をかける。無理に体をゆすったりしないように!
普段と比べて、しゃべり方はどうか?
- 普段通り。
- いつもより聞こえにくい。
目を開けるかどうか?
- 声をかけなくても目を開ける。
- 声をかければ目を開く。
- 全く目を開けてくれない。この場合は緊急事態の可能性あり。
(2)局所症状の確認
ぶつけた場所を実際に目で見て確認します。
1か所だけとは限らないので注意して観察しましょう。頭部打撲の場合は、症状がなくても必ず医師へ連絡するようにしてください。
痛みはあるか?
- 安静時でも痛い。
- 他人が動かそうとすると痛い。
- 自分で動こうとすると痛い。
いずれにしろ、痛みがある場合、基本的には要安静です。
腫れているか? 赤くなっているか? 熱を持っているか?
- 転倒直後から腫れてきた。
- ○○分後くらいに腫れてきた。
- 腫れもなく、赤くもなっていない、など。
10〜15分以内に腫れてきた場合には骨折の可能性があります。
(3)全身症状の確認
呼吸状態はどうか?
- 落ち着いている。
- 普段と異なる(痛そう、苦しそう、回数が多いなど)。
瞳孔はどうか?
- 左右の大きさは同じくらい。
- 左右で大きさが異なる。
左右差がある時は緊急事態の可能性があります。
けいれんなどは起きていないか? 震えたりしてないか?
けいれんには様々なパターンがあります。自信が持てない時は勝手に判断しないこと。
(4)定期的な確認
必ず定期的に観察を繰り返すこと。
前述の(1)〜(3)の症状は何分後に出現するかわかりません。
最低でも2時間ごとには確認してください。
観察の間隔がわからない時は医師へ相談してください。
一番怖い症状として、吐き気と嘔吐があります。このような症状を認めると、脳出血などが疑われるため緊急事態の可能性があります。
(5)処置
基本は、安静にして、痛めた場所を冷やすこと。
服用中の薬や基礎疾患によっては、冷やすことで持病を悪化させることもあります。基本的には医師の指示にしたがってください。
特に異常がなくても、職場の上司や医師には「異常なし」の連絡するようにしましょう。
ちなみに、高齢者の転倒で骨折しやすい部位は、足のつけ根(大腿骨頚部・転子部骨折)、肩(上腕骨近位端骨折)、手首(橈骨遠位端骨折)、腰(腰椎圧迫骨折)です。覚えておきましょう。
高野真一郎(日本プライマリ・ケア連合学会 認定医・指導医)
昭和51年生まれ。岩手医科大学を卒業後、北上済生会病院で初期研修を修了し、外科・心臓血管外科を専攻。多摩丘陵病院、慶應義塾大学病院、東京天使病院等にて急性期治療から慢性期治療を経験。その後、やまとサンクリニック、登戸サンクリニック、八王子北クリニックにて在宅医療や介護と関わる。現在、しん平和島クリニック院長。本書は、著者が実際に使っていた看護師・介護士へのレクチャーマニュアルがベースとなっている。日本プライマリ・ケア連合学会 認定医・指導医。
しん平和島クリニック http://www.shin-heiwajima-cl.jp/
「これ」だけは知っておきたい高齢者ケアにおける命を守る知識と技術【超基礎編】高野真一郎(日本プライマリ・ケア連合学会認定医・指導医)