「免疫が落ちている」「免疫力を上げる」…
普段から健康についての話でよく耳にする言葉『免疫』ですが、正しい知識を持っていますか?
免疫について学んでみましょう。
免疫力って上げたり下げたりできるの?
結論から言えば、免疫力を上げたり下げたりすることは可能です。
臓器移植では免疫による拒絶反応で移植した臓器が排除されないように、
免疫抑制剤という薬を使って、移植患者の免疫を低下させます。
免疫抑制剤を飲んでいる患者さんは、風邪をひきやすくなったり、
ウィルスや細菌による感染症にかかりやすくなります。
また、一部の免疫抑制剤はアトピー性皮膚炎などのアレルギーによる病気や、
リウマチなどの自己免疫疾患の治療にも使われます。
これは免疫反応を少し抑えて、病気の症状を和らげることが目的です。
逆に免疫をあげる薬もあり、癌の治療などに使われています。
身体の免疫細胞を活性化させて癌細胞を攻撃させることが目的です。
これは薬を使った医学的な治療の話ですが、
巷で言われている「免疫力を上げる健康法」とか「免疫力上げる食べ物」
というものは存在するのでしょうか?
特定の食品の摂取などで免疫力が上がることは、ほぼない
ここで考えていただきたいのは「免疫力を上げる」という意味です。
これは「病気に感染症や癌などの病気にかかりづらい体質を作る」
というイメージで言われていると思いますが、
そのような「免疫力」を測る指標や方法はありません。
人間の免疫システムは、白血球やキラー細胞などの免疫細胞や、
インターフェロン、リンホカインやサイトカインといった
非常に多くの物質で調節されています。
これらが複雑に絡み合って「免疫力」を調節しています。
そして、免疫細胞や免疫系に関する物質も役割分担が違っていて、
一部分の働きはわかっていても、全体での働きは
まだわからないことが多いのです。
一部の免疫物質が活性化しただけで
「免疫力が上がって病気になりづらくなった」と簡単に言うことはできません。
何か特定の食品を摂ると免疫力があがって病気への抵抗力が高まるということは、
あまり期待できないと思ったほうが良いでしょう。
昔ながらの養生法などを取り入れよう
このように言ってしまうと身も蓋もないように思えますが、
体温を下げたり、ストレスが続く状態だと免疫細胞の活性が下がることは、
動物実験などで立証されています。
身体を冷やさない、リラックスする、適度な運動をする、
バランスの良い食生活をする、といった昔からの養生法や漢方医学の考え方は、
身体のバランスを取って免疫力を高め、
病気への抵抗力を高めることになるものと考えられています。
なによりも、このような生活習慣を続けることが、免疫力を高め、
病気になりづらい身体をつくる最善の方法と言えるでしょう。
【参考】