嚥下障害がある高齢者は、「薬を飲めた」と思っていても、後から口の中を確認してみると薬が残っていることも少なくありません。
錠剤を誤嚥すると薬が気道の中に入ってしまい、誤嚥性肺炎や窒息などのリスクがあります。
嚥下障害のある高齢者が、薬を服用するときに注意すべきポイントを説明します。
嚥下のレベルを確認する
薬は水や白湯などと一緒に服用します。
しかし嚥下障害があり、水を飲んでむせる方は水や白湯で薬を服用することは困難です。
まずは、水分にとろみをつければ嚥下できるのか、ゼリーの塊を飲み込むことができるのか、ペースト状であれば嚥下できるのかなど、嚥下機能のレベルを確認し、誤嚥リスクが少ない安全な飲み方を選択しましょう。
嚥下機能のレベルに応じた薬の服用には以下の方法があります。
- とろみをつけた水分の嚥下が可能な人 → とろみをつけた水や白湯で服用する
- ゼリーの塊を飲み込むことができる人→「らくらく服薬ゼリー」などの服薬補助ゼリーで服用する
- ペースト状であれば飲み込むことができる人→嚥下食などペースト状の食べ物と一緒に服用する
言語聴覚士による嚥下リハビリテーションを受けている方の場合、どのような方法なら安全に薬を服用できるのかを確認しましょう。
飲みやすい薬の剤型を確認する
飲み薬(内服薬)にはカプセル剤、錠剤、粉薬(顆粒剤など)、口腔内崩壊錠(OD錠;唾液と混ざることで薬が溶け、水なしでも飲み込める薬)などの剤型があります。
嚥下障害がある高齢者の場合、
カプセル剤が喉にひっかかったり、
錠剤が舌の下に残っていたり、
粉薬が歯茎に固まって付着していたりすることがあり、
「薬が飲めた」と思っても、口の中に薬が残ったままになっていることがしばしば見受けられます。
一般的には、ゼリーやペースト状の食材と一緒に飲み込むことができる小さな錠剤や、口の中で溶ける口腔内崩壊錠(OD錠)が飲みやすいとされていますが、個人によって飲み込みやすい薬の剤型は異なります。
口腔内崩壊錠(OD錠)は、水なしでも服用できるとされていますが、口の中や喉に薬が残ってしまうこともあるので、薬を服用した後には、嚥下機能のレベルに応じた水分やゼリーなどを摂取しましょう。
薬を嚥下食などの食べ物に混ぜて服用する場合、食べ物との組み合わせによっては吸収が悪くなる薬もあるので、食べ物と一緒に服用していい薬かどうかを事前に医師や薬剤師に確認したほうがいいでしょう。
また、粉薬を食べ物に混ぜる場合、粉薬の量が多くなると、食感が粉っぽくなり誤嚥につながることもあります。
どのような剤型が安全かつ確実に飲み込むことができるかを確認することが大切です。
飲み薬の服用が難しい場合には、1日の服薬回数を少なくできるか、飲み薬をやめて貼り薬や坐薬や吸入剤などに変更できるかなど、医師に相談してみましょう。
薬をお湯に溶かして服用する簡易懸濁法
固形物を口に入れることが難しい方には、錠剤やカプセル剤を少量の55~60度程度のお湯に溶かして服用する「簡易懸濁法」があります。
【参考】
「簡易懸濁法データベース」 国立病院機構 東京医療センター
水でむせる方は、薬をお湯で溶かした後にとろみをつけます。
ただし、お湯に溶けにくい薬、溶かす前に砕いておくべき薬、粉砕・懸濁してはいけない薬などがあるので、医師や薬剤師に確認するようにしましょう。
粉薬の場合も、少量のお湯に溶かして、とろみをつけて服用する方法があります。
薬を飲むときの姿勢に注意する
薬を服用するときは、食事をするときと同じように本人がしっかりと覚醒していることを確認しましょう。
眠っている状態や、無意識の状態で薬を服用してしまうと、誤嚥のリスクが高まり、口の中や喉に薬が残留しやすくなります。
座位を保てる方は、座位で薬を服用しましょう。
座位を保つことが難しい場合は、30度仰臥位で、頭頸部の下に枕などを入れて、やや頸部前屈姿勢で薬を服用します。
脳卒中後に片麻痺があり、口の中や喉に食べ物が残りやすい方は、食べ物同様、薬も残ってしまう可能性が高いので、麻痺側に向いて服用するようにしましょう(横向き嚥下)。
【参考】
「特集 「口から食べる」を支援する栄養管理」 『日本静脈経腸栄養学会雑誌』2016
「嚥下機能を向上させる薬剤と誤嚥しにくい服薬方法」『鹿児島市医報』第49巻第8号 2010年
「摂食・嚥下障害者の服薬について」 総合リハビリ美保野病院HP