保健機能食品とは?
「保健機能食品」というものをご存知ですか?
保健機能食品とは、さまざまな健康食品が存在するなかで、国が定めた安全性や有効性などの基準を満たした健康食品のことです。
食品の「機能」とは、ちょっとわかりにくいかもしれませんが、ざっくりというと、「お腹の調子を整えます」「脂肪の吸収をおだやかにします」といった、その食品を摂取することで期待できる「効果」のことです。
保健機能食品の代表格は「トクホ」(特定保健用食品)ですが、それ以外にも「栄養機能食品」と「機能性表示食品」があります。
「健康食品」とは (厚生労働省) | ||||
健康食品 | 医薬品 | |||
保健機能食品 | ||||
いわゆる「健康食品」 | 機能性表示食品(届出制) | 栄養機能食品 (自己認証制) | 特定保健用食品(個別認可制) | 医薬品(医薬部外品を含む) |
◆トクホ(特定保健用食品)
トクホには、科学的根拠に基づいた機能が表示されています。
「トクホマーク」と一緒に「おなかの調子を整える」とか「脂肪の吸収を抑える」といった表示を見たことがあると思います。
このようなトクホの機能表示は、国が審査を行い、許可したものです(個別認可制)。
トクホができた経緯として、それまでの健康食品は、機能の表示がいい加減で、中には効果が疑わしい商品もあったことから、国が健康食品の機能性を審査・許可制にすることで、健康食品の誇大表示や虚偽広告を規制しようとしたのです。
◆栄養機能食品
栄養機能食品は、1日に必要な栄養成分の中で、特定の栄養成分(ミネラル、ビタミンなど)の補給・補完のために利用できる健康食品です。
栄養成分の機能を表示できるのは、13種類のビタミンと6種類のミネラル、n-3系脂肪酸です。
これらの栄養成分の有効性は、すでに科学的根拠によって証明されており、これらの栄養成分を一定の基準量含む食品であれば、国に届出などをしなくても、国が定めた表現によって機能を表示することができます(自己認証制)。
栄養機能食品としての表示が認められている栄養成分 | |
ミネラル類 | 亜鉛、カリウム、カルシウム、鉄、銅、マグネシウム |
ビタミン類 | ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、葉酸 |
脂肪酸 | n-3系脂肪酸 |
◆機能性表示食品
機能性表示食品は、事業者(メーカーなど)の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示した食品です。
販売前に、安全性および機能性に関する情報などを国に届け出ますが、トクホとは異なり、国の許可を受けたものではありません(届出制)。
栄養機能食品と機能性表示食品は、機能の表示に関して、国の許可がないのでトクホの簡易版のような制度といえるでしょう。
科学的根拠とはなにか?
上述した「トクホ」(特定保健用食品)、「栄養機能食品」、「機能性表示食品」の3種類の保健機能食品には、国の許可の有無という違いはありますが、いずれも「科学的根拠」によって、その食品に含まれる成分の機能(効果)が証明されています。
では、ここで言われている「科学的根拠」とは、なんでしょうか?
ひとつは、「実際に人間が●●を摂取したことで●●のような効果があった(なかった)」という実験結果です。
このような実験を「臨床試験」といいます。
もうひとつは、既に発表されている複数の研究結果にもとづいて、食品(栄養成分)の機能を証明するものです。
これを「研究レビュー」といいます。
「●●を食べはじめてから、元気になりました!」
「●●という成分は健康に良いという複数の研究結果があります!」
このようなキャッチコピーを見ると、科学的根拠があるように思えて、つい買ってしまいますよね。
医薬品の科学的根拠とは
ここで医薬品の開発について、少し触れておきます。
医薬品の開発に、臨床試験は欠かせません。
医薬品(先行品)の開発においては、厳密かつ大規模な臨床試験を行い、安全性と効果、そして、その効果が「偶然ではない」ことを証明しなくてはいけません。
医薬品の開発は基礎研究から始まり、動物実験を経て、大学病院などの多くの医学専門機関が集まって行われる臨床試験に至ります。
臨床試験には3つの段階があります。
少数の健常者で薬の体内での動きや安全性を確認する第Ⅰ相試験。
少数の患者で薬の安全性や適切な投与量を確認する第Ⅱ相試験。
多数の患者で(時には数百人)、薬の安全性と効果を確認する大規模な第Ⅲ相試験。
動物実験や人間の細胞を使った実験で効果と安全性が確認されても、実際の臨床試験では思わぬ副作用が起きたり、期待された効果が得られずに、開発が中止されてしまうことも少なくありません。
このように、医薬品は厳密かつ大規模な臨床試験という科学的根拠をもって、世に送り出されるのです。
健康食品の科学的根拠とは
医薬品(先行品)の開発には、十年以上の時間と数百億円のコストがかかりますが、製品化されれば、大きな収益が見込めます。
しかし、食品の場合は競争が激しく、需要予測も難しいため、開発に膨大な時間とコストをかけることができません。
したがって、食品の臨床試験は、少数の人を対象とした簡便な臨床試験で行われます。
問題は、この少人数で簡便に行われた臨床試験が「科学的根拠」となりえるかということです。
ここで医薬品と食品の違いについて考えてみます。
医薬品は、病気という異常な状態を正常な状態に戻すために、人体に強く作用(機能)します。
一方、食品は日常的に摂取しても問題がないので、人体に強い作用は与えません。
では、病気の人が医薬品を摂取した時と、健康な人が食品を摂取した時では、どちらに大きな変化がみられるでしょうか?
当然、医薬品を摂取した時ですね。
健康な人が食品を摂取した時には、微細な変化か、もしくは変化はみられないでしょう。
変化を測定する場合、変化が小さければ小さいほど測定が困難になります。
大きな変化は簡単に測定できますが、小さな変化を測定するには、より精密で正確な測定器が必要です。
たとえば、長さの変化が、1㎝単位なら定規で測れますが、1/10㎜単位を測るにはマイクロメーターが必要です。
それと同様に、食品の微細な機能を「科学的」に「正確」に測定するためには、医薬品の開発よりも精度が高く、大規模な試験が必要となります。
このように、食品の機能を科学的に証明することは、非常にハードルが高いのです。
その「科学的根拠」は科学的か
実際に販売されているトクホをはじめとする保健機能食品が「科学的根拠」としている臨床試験をみると、多くの試験で、被験者が数十人、試験によっては数人のケースもあります。
また、複数の研究結果を分析する研究レビューにおいて、引用されている研究論文が2つだけというものもありました。
これでは「科学的な手法を真似た非科学的な研究」と、うがった見方をされても仕方がありません。
科学的な正確さを得るためには、得られた結果が「偶然ではない」ことを証明するために、規模を拡大し、何度も繰り返し試験することが必要です。
これを「再現性」といいます。
しかし、この再現性の「科学的な証明」が全く行われていないケースが、食品の研究に多くみられます。
健康食品やサプリメントに限ったことではありませんが、「科学的根拠」を主張するものに出会った時には、それを鵜呑みにせずに「その科学的根拠は本当に科学的なのか?」と考えたみるといいでしょう。
【参考】