口から食物を摂取する際に行う一連の行為を「嚥下」、そして嚥下がうまくいかないことを嚥下障害といいます。
嚥下障害による誤嚥を招かないために、誤嚥を防ぐ呼吸法についてご紹介します。
嚥下時の呼吸は誤嚥予防の重要な手がかり
嚥下時の呼吸は、誤嚥予防の重要な手がかりとなります。
通常、嚥下の最中は無呼吸状態になります。
ところで皆さん、通常、嚥下が終わった直後に、呼気(吐く)と吸気(吸う)、どちらから呼吸が再開するかわかりますか?
同じ質問をいろんなところで聞いてみると、意外とみんな知らないんですよね。
答えは「呼気」です。
この答を導くには嚥下の流れ理解する必要があります。
嚥下の一連の流れはこのようになります。
唾液、お水、お茶、おかゆ、麺類、炭酸飲料、ご飯、お肉など、硬いものから軟らかいものまでいろいろ試してイメージしてみてください。
嚥下が終わった時に、梨状窩に残留物がなければ、誤嚥の可能性は低くなります。
もし残留物があって、気管の方に落ちそうになっていても、呼吸再開時の呼気によって、肺からの空気が気管に落ちそうな残留物を押し戻してくれるんです。
ところが、よく誤嚥を起こす高齢者は、嚥下後の呼吸が吸気から再開することが多いため、ますます誤嚥を起こしやすくなるわけです。
よ~く観察すれば、必ずどちらからか判別できます。もし吸気から再開する人を見つけたら気をつけましょう。誤嚥リスクが高い人ですから。
誤嚥を防ぐ呼吸法
嚥下後の呼吸が吸気から再開している人に対しては、深呼吸で空気を吸い込んだ状態で、口に食べ物を入れて嚥下してもらえばいいんです。
肺にたくさん空気を吸い込んでいれば、嚥下後の呼吸再開は強制的に呼気から始まります。
この方法は認知症が進行している人でも、できる場合が多いので、試してみましょう。
自分でもやってみてください。
唾を飲み込んだ直後の呼吸は呼気と吸気どちらから再開していますか?
吸気から再開した人は、将来、おじいちゃんおばあちゃんになった時に誤嚥性肺炎になりやすいですよ。若い人でムセやすい人は、嚥下後呼吸が吸気から再開しているのかも知れません。早い段階で自分で意識して改善しておいた方が良いですよ。
高野真一郎(日本プライマリ・ケア連合学会 認定医・指導医)
昭和51年生まれ。岩手医科大学を卒業後、北上済生会病院で初期研修を修了し、外科・心臓血管外科を専攻。多摩丘陵病院、慶應義塾大学病院、東京天使病院等にて急性期治療から慢性期治療を経験。その後、やまとサンクリニック、登戸サンクリニック、八王子北クリニックにて在宅医療や介護と関わる。現在、しん平和島クリニック院長。本書は、著者が実際に使っていた看護師・介護士へのレクチャーマニュアルがベースとなっている。日本プライマリ・ケア連合学会 認定医・指導医。
しん平和島クリニック http://www.shin-heiwajima-cl.jp/
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