人間にとって口から食物を摂取するということは生命を維持するうえで非常に重要なことです。
「嚥下障害」とはこの一連の行為がうまくできなくなる状態です。この記事では嚥下障害についてまとめました。
嚥下障害とは
「嚥下」とは、食べ物を口に入れ、噛み砕き、飲み込む行為。嚥下障害はこの一連の行為がうまくできなくなる状態のことです。
人は年を取るにつれて様々な機能が衰えてきますが、高齢になり嚥下がうまくできなくなると、いよいよ人生の最期が近いというのは医療に携わる者として共通の考え方だと思います。
患者さんのADL(Activities of Daily Living:日常生活動作)のためにも、嚥下機能の評価、リハビリテーションなどの知識は深めておきたいところです。
嚥下障害の4期
嚥下について考える際、食物が口から胃に到達するまでの過程を、通過する場所によって4つに分けて考えます。※学会によってはもっと細かく分類されてます。
この4つの過程のどこか1つでも問題があると嚥下障害が起こります。
(1)認知期の障害について
これは、割愛しましょう。何となくわかるでしょう? 食べ物が認知できないと、当然、嚥下もできません。
(2)口腔期の障害について
実はこの障害は若年者でもしばしば認められます。熱いラーメンをズッズッとすすった時にムセたことありませんか? これも口腔期の嚥下バランス障害の1つです。モグモグ咀嚼して「さあ飲み込むぞ」という前に、喉の奥(食道の手前)まで落ちてしまう現象です。
(3)咽頭期の障害について
咽頭期の障害の最大の原因は、脳血管障害(脳梗塞や脳出血など)です。
咽頭・喉頭の支配神経は脳幹から出ているものが多いため、脳のダメージによって神経伝達ができなくなり、筋肉が動かなくなるのです。
(4)食道期の障害について
これは、食道入口部が狭くなっている状態です。食道はご存じのように消化管です。「管くだ」です。その管には、筋肉の層があり、そこに障害が起こって、入り口が狭くなっている状態です。
嚥下障害まとめ
嚥下障害はこの(1)から(4)のどこかに原因があります。
嚥下障害は最悪の場合、誤嚥性肺炎や窒息に至る可能性もあるので、適切な食事介助やリハビリが必要となります。
高野真一郎(日本プライマリ・ケア連合学会 認定医・指導医)
昭和51年生まれ。岩手医科大学を卒業後、北上済生会病院で初期研修を修了し、外科・心臓血管外科を専攻。多摩丘陵病院、慶應義塾大学病院、東京天使病院等にて急性期治療から慢性期治療を経験。その後、やまとサンクリニック、登戸サンクリニック、八王子北クリニックにて在宅医療や介護と関わる。現在、しん平和島クリニック院長。本書は、著者が実際に使っていた看護師・介護士へのレクチャーマニュアルがベースとなっている。日本プライマリ・ケア連合学会 認定医・指導医。
しん平和島クリニック http://www.shin-heiwajima-cl.jp/
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