高齢になると、身体機能、認知機能、日常生活機能の低下とともに、排泄機能の低下も見られるようになります。
重度の排泄障害や、疾患による排泄障害の場合は適切な治療が必要ですが、加齢に伴う軽度の排泄障害の場合は、日常生活の工夫や体操などで解消できることもあります。
排泄障害を予防するための日常生活の工夫について、考えてみましょう。
歩行機能を維持してトイレで排泄することの重要性
排泄障害は、
・残尿(排尿後、まだ膀胱に尿が残っている)や尿閉(膀胱に尿がたまっているのに排尿できない)などの排尿障害、
・頻尿(排尿の回数が多い)、尿失禁(尿が漏れる)などの蓄尿障害、
・便秘などの排便障害、
・頻便などの蓄便障害、
に分けられます。
高齢者の場合はいくつかの障害が重なってあらわれることもあります。
排泄機能の低下は、日常生活機能の低下につながります。
排泄障害を予防するために重要なことは、歩いてトイレに行き、排泄することです。
歩行機能や立位機能が低下して、トイレでの排泄が困難になると、オムツでの排泄となり、ひいては寝たきりとなる可能性もあります。
寝ている姿勢だと、排尿や排便が行いにくいため、寝ている時間が長くなると、排泄障害が悪化することになります。
歩行機能を維持するためには、抗重力筋(腹筋、背筋、腰や足の筋肉など)を鍛える体操やウォーキングなどを積極的に行いましょう。
また、トイレや廊下に手すりを設置するなど、排泄を行いやすい環境を整えることも大切です。
排尿・蓄尿障害の暮らしの工夫
尿意がわかりにくい、排尿に時間がかかるなどの排尿障害の場合は、次のような工夫で、排尿障害が改善する可能性があります。
・時間を決めてトイレに行く
・排尿時に手で膀胱部を圧迫する
・(女性の場合)排尿時に腹圧をかけやすくするために踏み台(足台)を設ける
頻尿や尿失禁の場合には、外出先や夜間のトイレで慌てることのないように次のことを心がけてみましょう。
・事前にトイレの場所を確認しておく
・尿意を感じたら早めにトイレへ行く
・トイレに近い部屋で寝る
・脱ぎやすい下着を身に着ける
・利尿作用のあるカフェインや冷たいものを摂りすぎない
・体を冷やさないように温かい服装にする
腹圧性尿失禁予防の体操
笑った時、咳やくしゃみをした時、重いものを持ち上げた時など、腹圧がかかった際に尿失禁してしまうケースは、女性に多くみられます。このようなケースでは骨盤底筋体操が有効です。
骨盤底筋とは、骨盤の底にあり、骨盤内の臓器をハンモックのように支えている筋群で、尿道の開閉をコントロールしています。
女性は妊娠・出産や更年期、肥満、加齢などの影響で骨盤底筋が緩みやすく腹圧性尿失禁を起こしやすくなります。
・骨盤底筋の体操
仰向けに寝て、両膝を立てます。
その状態で、膣と肛門を締めるように力を入れ、それを5秒間続けます
5秒たったら、ゆっくり力を抜きます。
これを20回ほど繰り返します。
朝と夕方、一日2回行います。
排便・蓄便障害の暮らしの工夫
高齢者は、水分の摂取量を意識的に減らしたり、身体活動が減少したり、筋力の低下から腹圧がかかりにくくなったりするので、便秘を起こしやすくなります。
軽度の便秘であれば、次の工夫で改善することがあります。
・水分の摂取量を少し多めにする(ただし水分の過剰摂取は腎臓に負担がかかるので摂取量には注意してください)
・朝に冷たい水を飲んで、腸の動きを促す
・立位をとることや、足踏みなどの体操を行い、腸に刺激を与える
・腹圧がかかりやすいように、トイレに手すりや踏み台(足台)を設置する
・へその下から「の」の字を書くようにおなかをマッサージする
軟便や下痢便で頻回に便が出る、便失禁してしまう場合には、繊維質が多く含まれる食品や刺激の強い食品を控えることで改善する場合があります。