こんにちは、精神科医の青木です。
今回は「精神科病棟へ入院する際に、確認しておくことは?」という質問にお答えします。
精神科病棟へ入院する際に確認しておくこと
精神科の入院設備が整った病院には大きく分けて2種類あります。
一つは、常勤の医師がすべて精神科医である精神科病院。もう一つは、総合病院のなかにある精神科病棟です。
もしも内科や外科の病気も抱えており、精神科の治療と並行して他の診療科の治療やリハビリが必要な場合は、総合病院を選んだ方が良いと思われます。
また、一概に精神科病棟といっても、救急や急性期がメインの病棟、慢性期がメインの病棟、高齢で認知症がメインの病棟といくつかタイプがあります。また近年は、うつ病のサラリーマンや主婦を専門としたストレスケア病棟も増えてきました。
入院を検討する際には、病棟によって建物の構造や病棟のルールが異なるので、一度病棟を見学するか、入院のしおりを見て、不明な部分はきちんと説明を受けておくと安心できるでしょう。
病棟見学の際に確認しておきたいことは次の点です。
- 閉鎖病棟か開放病棟か
- 病棟の雰囲気や患者さんの属性
- 個室、4人部屋、それ以上の大部屋の割合
- 家族との面会方法
- 食事の場所
- 作業療法や集団精神療法の場所と方法
その他、入浴、売店、おやつ、持参物など、個人的にこだわっていることがあれば事前に確認しておきましょう。
持ち込めるものと持ち込めないもの
基本的に、治療と関係のないものは持ち込みが禁止となるか、制限されます。
なかでも、自殺の手段となりうるコードやひもの類の持ち込みは厳禁です。本人にそうした意図がなくても、他の患者さんが手にする可能性もあるので厳しくチェックされます。はさみなどの刃物も同様です。
それ以外の日用品や電子機器の持ち込みについては病院によって対応が異なります。
たとえば、入院中もパソコンを使って仕事をする必要がある場合、病院によっては許可されることもあります。ただし、仕事のために十分な休養が取れず、治療に支障をきたすと判断された場合は、持ち込みが禁止されることもあります。
喫煙や入浴などの設備環境について
また、喫煙に関しても、病院によって設備や対応が異なります。
精神科病棟によっては、喫煙所での喫煙が認められているところがあります。その際、完全分煙式の喫煙室があれば問題ないのですが、それがない場合は病棟外の喫煙所で吸うことになります。患者さんに行動制限がかけられている場合、喫煙場所へ行くことができないこともあるので、愛煙家の方はその点を確認しておいた方が良いでしょう。
ただし最近は、病棟内完全禁煙の病院が増えてきています。
入浴に関しては、毎日入浴ができる病棟は少なく、週2〜3回のところが多いようです。また、薬によっては、副作用で全身けいれんなど、てんかん発作が起きやすくなることもあります。
したがって、浴室に浴槽が設置されている場合には、患者さんがおぼれないよう、二人以上で入浴したり、スタッフが立ち合ったりすることもあります。
もし、休息を第一に考え、ホテル感覚で入院したいのであれば、多少費用が高くても、快適な個室を備えた病院を探すと良いでしょう。
特にストレスケア病棟は、そのようなニーズに応える病室を備えています。
青木 崇(精神科医)
1970年川崎生まれ。1996年京都大学医学部医学科卒。
京都第一赤十字病院研修医、富田病院(函館)常勤医師を経て、2005年国立清華大学人類学研究所(台湾・新竹)卒(人類学修士)。帰国後、のぞえ総合心療病院(久留米)副医局長を経て、2009年から関東の民間病院で病棟医長を務めている。精神科医、精神保健指定医、日本精神神経学会精神科専門医・指導医。
『こころの病気を治すために「本当」に大切なこと : 意外と知らない精神科入院の正しい知識と治療共同体という試み 』
青木崇(精神科医)