こんにちは、精神科医の青木です。
今回は「精神科を受診したことは会社や家族にばれないですか?」という質問にお答えします。
精神科を受診したことが会社や家族にばれることはある?
医療機関で保険証を提出すると、受診日時、病院名、保険病名、検査・治療内容といった診療情報が、医療機関から保険会社や保険組合に送られます。健康保険の場合、社内の保険の担当者はこのような情報を知りうる立場にあります。
また、税金の医療費控除を受ける場合にも、会社の担当者に知られる場合があります。
家族が同じ健康保険に加入している場合や、同居している家族が本人宛の郵便物を見ることがある場合には、家族に知られる可能性もあります。
また、医療機関が何らかの理由で本人確認を要する場合、自宅に連絡が行くことも考えられます。
絶対にばれないとは言い切れない
もしも、特別な理由で自分の受診を家族や会社に知られたくない場合には、診療中、もしくは医療機関の窓口で、その旨を伝えておくべきでしょう。原則的には守秘義務があるので、個人情報は漏れないことになっていますが、絶対に情報が漏れないとは言い切れません。
仮に健康保険を使わなかったとしても、あなたが通院しているところを、家族や会社の関係者に見られてしまうこともあります。
それ以外にも、会社の保険担当者がうっかり情報を漏らしてしまったり、あなたを知ってる人がたまたま病院で働いていたり、あなた宛の受診情報を誰かが誤って開封したりと、あなたの受診がばれない可能性はまったくのゼロではありません。
実際、近所の人に見られたくないといって、遠くまで通院する人もいます。たしかに遠方であれば、知られる可能性は低くなるでしょう。しかしそれでも、ばれない可能性をゼロにはできません。
患者さんの個人情報が入ったパソコンが盗まれて、病院が謝罪するというニュースが年に数回ありますが、そういうことだってありえるのです。
受診したことを知られたくない理由と向き合う
そもそも、なぜ受診したことを家族や会社に知られたくないのでしょうか。
あなたの「知られたくない理由」について、もう一度主治医と話し合い、考えてみることが必要かもしれません。
そういう考えを持つ人がいる一方で、家族や職場と相談して、受診を勧められてから病院に来る人も少なくありません。
初診の時から家族や職場の人が同伴すれば、自宅や職場での様子もよくわかります。
また、何かあった場合にも、家族や職場の方が本人と同伴していれば、主治医に助言を求めることもできます。
青木 崇(精神科医)
1970年川崎生まれ。1996年京都大学医学部医学科卒。
京都第一赤十字病院研修医、富田病院(函館)常勤医師を経て、2005年国立清華大学人類学研究所(台湾・新竹)卒(人類学修士)。帰国後、のぞえ総合心療病院(久留米)副医局長を経て、2009年から関東の民間病院で病棟医長を務めている。精神科医、精神保健指定医、日本精神神経学会精神科専門医・指導医。
『こころの病気を治すために「本当」に大切なこと : 意外と知らない精神科入院の正しい知識と治療共同体という試み 』
青木崇(精神科医)