こんにちは、精神科医の青木です。
今回は「精神科での診察時間が短いのでは?」という質問にお答えします。
精神科での診察時間が短い理由
一般的に、精神科の保険診療では、初診時に30〜60分程度の時間をかけて患者さんの話を聞きますが、2回目以降の再診では、通常5〜10分程度の診察時間で終わってしまいます。
一般的には、このような形で治療が進んでいきますが、この短い診察時間を、不満に感じる患者さんもいます。
では、なぜこのような、5分間診療が行われるのでしょうか。
精神科は、他の診療科と異なって検査などによる収益が少なく、現在の保険点数では、再診時に他の診療科と同じ患者数を診ても、収益的には厳しく、場合によっては赤字になることもあります。総合病院のなかにある精神科は「お荷物」と揶揄されることも多いです。
現在のストレス社会において、総合病院の精神科には本来高いニーズがあるはずなのですが、その数が増えないのは、病院の経営的な理由によるところが大きいと思われます。
ただでさえ、赤字ギリギリの採算なのに、患者さん一人あたりの診察時間をさらに増やせば、医師の休憩時間や休日を診察にあてるしかありません。もしくは赤字が膨らんで精神科が閉鎖されるという事態もありえます。
そもそも、初診で時間をかけて、治療の見通しをある程度立てることができれば、次からの再診はたいてい5分程度で済ませることができます。毎回毎回、診療時間を長く取ることが、治療上、必ずしも有益とは限らないのです。
時間をかけて話を聞いてもらいたい場合は個人カウンセリング
もしも時間をかけて話を聞いてほしいのであれば、個人カウンセリング(心理療法)があります。
これは、医師もしくは臨床心理士が30〜60分かけて話を聞きますが、健康保険が適用されないことが多く、経済的な負担は大きくなります。
心理療法は治療対象となる疾患と、治療者のスキルによって、精神分析療法、芸術療法、自律神経訓練法、催眠療法など、さまざまな手法があります。
医師のもとで、集団で行われる心理療法には、健康保険が適用される場合もあります。集団認知行動療法、力動的集団精神療法、自助グループなどで、やはり1回1時間が基本です。
青木 崇(精神科医)
1970年川崎生まれ。1996年京都大学医学部医学科卒。
京都第一赤十字病院研修医、富田病院(函館)常勤医師を経て、2005年国立清華大学人類学研究所(台湾・新竹)卒(人類学修士)。帰国後、のぞえ総合心療病院(久留米)副医局長を経て、2009年から関東の民間病院で病棟医長を務めている。精神科医、精神保健指定医、日本精神神経学会精神科専門医・指導医。
『こころの病気を治すために「本当」に大切なこと : 意外と知らない精神科入院の正しい知識と治療共同体という試み 』
青木崇(精神科医)