こんにちは、精神科医の青木です。
今回は「精神科の医師が本人の話をきちんと聞いてくれないのですが?」という質問にお答えします。
精神科の医師が本人の話をきちんと聞いてくれないという家族の声
「とにかく本人の話をしっかり聞いてほしい」こういう主張をされる家族の方は、本人の話を聞きさえすれば病気が治る、という気持ちが強いのかもしれません。
もちろん、患者さんの訴えに耳を傾けることは大切です。しかし、体の治療よりも、本人の訴えや希望を優先してほしいと家族の方が考えているならば、少し慎重な対応を考えます。
家族が本人を思う気持ちはわかります。しかし、本人の訴えや希望をかなえるだけで病気が良くなるのであれば、病院は必要ないでしょう。
家族が本人の意見や主張を聞くことにこだわる理由は?
なぜ、家族が本人の意見や主張を聞くことにこだわるのか。
こういう場合、家族がこだわっていること、憂慮していることがほかにあるのかもしれないので、医師は家族の言葉にも耳を傾けることになります。
治療方針に関して、家族側と治療する側が合意できなければ治療を進めることはできません。
また、こうしたケースの場合、他の病院でも医師と意見が対立して治療がうまくいかず、病院を転々としてきた可能性もあります。
家族が本人をいくつもの病院に連れていったにもかかわらず、結局治療がうまくいかなかったのであれば、「自分たちでやるだけやったけどダメだった」と、あきらめて、医師の意見を受け入れることも大切かもしれません。
青木 崇(精神科医)
1970年川崎生まれ。1996年京都大学医学部医学科卒。
京都第一赤十字病院研修医、富田病院(函館)常勤医師を経て、2005年国立清華大学人類学研究所(台湾・新竹)卒(人類学修士)。帰国後、のぞえ総合心療病院(久留米)副医局長を経て、2009年から関東の民間病院で病棟医長を務めている。精神科医、精神保健指定医、日本精神神経学会精神科専門医・指導医。
『こころの病気を治すために「本当」に大切なこと : 意外と知らない精神科入院の正しい知識と治療共同体という試み 』
青木崇(精神科医)