こんにちは、精神科医の青木です。
今回は「精神科の薬ではなく、カウンセリングで治してほしいのですが?」という質問にお答えします。
精神科の薬ではなく、カウンセリングで治してほしい
精神科の薬に対する不安や抵抗感は少なからずあると思います。
しかし、うつ病や統合失調症などで、精神症状が落ち着いていない段階では、本人が話をすればするほど、考えがまとまらなくなくなるようなこともあります。まずは薬物療法によって病的な思考や感情を治療することが大切です。
また、拒食症で体重が標準値を大きく下回っている場合、脳が栄養失調の状態になっていて、偏った考えにとらわれたり、情緒不安定になったりしやすいため、まずは栄養状態を改善させ、体重を標準に近づけるような体の治療が優先されます。
病気がトラウマに起因する場合、本人がその心の傷を乗り越えるための時間が必要です。長年にわたって蓋をしていた自分の感情と向き合っていく過程では、頭痛や不眠、フラッシュバックや抑うつ症状など、むしろ症状が悪化したり、変化したりして、治療意欲もなえてしまうことがあります。このような場合、まずは薬でこうした症状を緩和することも大切です。
薬のリスクも考慮しつつ最前の治療を
皆さんが心配されるように、たしかに精神科の薬は、種類によっては薬への依存や大量服薬のリスクがあります。このようなリスクを避けるためにも、細やかな薬の調整ができる入院治療は有力な選択肢の一つです。
もちろん、カウンセリングでの治療を否定するわけではありません。
患者さんの症状が軽いものであるならば、カウンセリングだけで治ることもあります。
また、薬を一切使わず、カウンセリングだけで治療を進めることで、症状の変化をはっきりと把握できるというメリットもあります。心の動きと症状がどのように関連しているかを知ることは、精神療法の過程においては大切です。
青木 崇(精神科医)
1970年川崎生まれ。1996年京都大学医学部医学科卒。
京都第一赤十字病院研修医、富田病院(函館)常勤医師を経て、2005年国立清華大学人類学研究所(台湾・新竹)卒(人類学修士)。帰国後、のぞえ総合心療病院(久留米)副医局長を経て、2009年から関東の民間病院で病棟医長を務めている。精神科医、精神保健指定医、日本精神神経学会精神科専門医・指導医。
『こころの病気を治すために「本当」に大切なこと : 意外と知らない精神科入院の正しい知識と治療共同体という試み 』
青木崇(精神科医)